独り暮らしは119をためらうな

言いたいことは題名の通りです。「自分の意識が無くなったら誰も救急要請してくれないんだからためらわねえよっ!」という人はここでお帰りいただいて結構です。題名を見ても「急に体調が悪くなって深夜に目が覚めたけど119していいのかな…」とか考えてしまう人は

救急車利用マニュアル A guide for ambulance services :: 総務省消防庁

を見てください。これでもう大丈夫ですね。おつかれさまでした。

さて、人生で2回目のアナフィラキシーを体験しました。1回目はルーマニアのド田舎で夜寝てる間に蚊に刺されまくって起きたのですが、最寄りの町から船が1日1往復しかない村は救急要請先がそもそも存在しないので呼吸しやすい体勢を維持しながらひたすら苦しみに耐えました。生きて帰ってこれて本当に良かった。

今回の経過はこんな感じです。

02:20頃:とにかく肛門が痒くて目が覚める。その後、膝の裏など汗を掻きやすい場所が痒いことに気が付いて汗のせいかと思いシャワーを浴びる。シャワー中、体表に複数の丘疹を認めたが、蚊に刺されただけかと考える。

02:30頃:シャワー継続中に痒い部分を引っ掻いた際、痒みを感じている場所を掻けていないことに気付く。この時点で痒みが頭部を含めて上半身全体に拡大している。加えて、耳道の閉塞感、息苦しさ等、痒み以外の症状が出始める。

02:40:近隣の救急外来を問い合わせる目的で#7199へ架電。看護師を名乗る女性による病状聴取の後、回りくどいくらいの鑑別診断を行われる(体重と併せて気胸の話とかされたんですけど、それ今要ります?合併症の可能性はあるか…?)。その後、「救急車を呼びますか?」と尋ねられたがタクシーを呼ぶだけの時間は残っていると判断し、当初の目的通り近医の紹介を受ける(というか、こっちに判断を投げるって役割的にどうなん?)。徒歩圏内に救急外来があったため、そこへ受診可能か問い合わせることにする。この頃、血管が腫脹するような感覚が上半身全体に拡がり、頭痛と胃腸の不快感がひどくなり始める。

02:47:最寄りの救急外来に架電。男性が応答。診察受け入れ可能か担当医に尋ねるとのことで保留状態に。7~8分後、看護師を名乗る女性が応答。受付にした説明を再度繰り返すが受診可否については歯切れの悪い返答。この時点で呼吸ペースが正常から変化している。もう限界だと判断し、救急搬送を依頼する旨を伝えて電話を切る。

02:58:119に架電し救急要請。財布を持ち、玄関の鍵を閉めた後、外へ。通りに一番近い部屋のため、倒れても発見されると考え玄関前に座り込む。

03:03:救急救命士より受電。何を話したか鮮明には覚えていない。

ストレッチャーに乗せられて救急車へ。問診と併せて心電図、血中酸素分圧、血圧を測定(PO2は95%を切るくらい、血圧は上下とも平常時より10~20低い)。この時点で発赤が顕著に出始める。搬送開始前に先刻問い合わせた病院の名前が出たため、断られた旨を伝える。別の病院から受け入れ許可が出たため救急搬送開始。搬送中に蕁麻疹が出始める。

病院到着後、医師による問診。この間にも血圧は下がっていく。乳酸リンゲル液とステロイド剤点滴。迷走神経反射もあったせいか血圧がどんどん下がっていく(最終的に上が90を切っていた)。5時頃に点滴終了。低血圧と吐き気でふらふらになっている。タクシーで帰宅した時間が5時半ごろ。

で、午前休を取る旨をラボのメンバーへメールで伝えて入眠。

今回は蕁麻疹と血圧低下が出始めた段階で済んでますけど、アナフィラキシーってアレルゲンへの暴露から発症、症状の進行速度が症例によって変わるんですよね。私の場合だと最初に掻痒感を感じてから発赤と蕁麻疹が出るまで40~50分掛かっています。なのでシャワーを浴びてから方々へ問い合わせても症状が進行する前に投薬を受けられています。でも、119に架電するという選択をしていなければ血圧下がりながらタクシーに揺られていたかもしれませんし、もしも進行が早ければタクシーを呼ぶ前に意識が朦朧としてしまった可能性もあります。こうなると、独り暮らしをしている私が深夜3時に頼れる手段はありません。詰んだ詰んだ。

というわけで、独り暮らしをしている良い子のみんなは119をためらわないように。あと救急診療費はそこそこ掛かるのでクレカと預金を準備だ。